ブログ記事
2026.07.07
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の
許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
建設業を営む皆様にとって、社会保険への加入は事業継続と発展のための重要な要素です。しかし、「社会保険の加入義務についてどこまで理解すれば良いのか」「建設業許可との関連性は?」「未加入だとどのようなリスクがあるのか」といった疑問や不安をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。特に、新規で建設業許可を目指す方や、既存の許可を更新しようとしている方にとっては、社会保険に関する正確な知識は不可欠です。
このコラムでは、大阪府を拠点とする行政書士・社会保険労務士として、建設業における社会保険加入の義務、それが建設業許可の取得・維持にどのように影響するのか、そして未加入の場合に考えられるリスクについて、社労士の視点も交えながら解説します。皆様が適切な判断と対応ができるよう、具体的な情報を提供いたします。
まず結論として、建設業を営む法人、そして従業員を雇用する一部の個人事業主には、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険)への加入義務があります。この社会保険への適正な加入は、建設業許可を取得・維持するための重要な要件の一つであり、経営事項審査(経審)においても評価の対象となります。
建設業許可の取得・更新を目指す場合や、公共工事への入札参加を検討している場合は、社会保険への適切な加入が不可欠です。未加入の場合、許可が受けられない、更新できない、あるいは経審で不利になるだけでなく、行政からの指導や罰則の対象となる可能性も考えられます。
建設業における社会保険の重要性を理解するために、まずは社会保険の基本的な枠組みを確認しましょう。
一般的に「社会保険」とは、以下の4つの保険制度の総称として使われることが多いです。
健康保険と厚生年金保険を合わせて「狭義の社会保険」、雇用保険と労災保険を合わせて「労働保険」と呼ぶこともあります。これら全てが、建設業を営む上で適切な対応が求められる社会保障制度です。
社会保険には、加入義務のある事業所(適用事業所)と、加入義務のある従業員(被保険者)が定められています。
加入対象となる従業員は、それぞれの保険によって異なりますが、原則として週の所定労働時間や月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である従業員などが対象となります。短期のアルバイトやパートタイマーであっても、条件によっては加入義務が生じるケースがあるため注意が必要です。
社会保険への適正な加入は、建設業許可の取得・維持において極めて重要な要素です。
建設業許可の申請・更新においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、適正に加入しているかどうかが確認されます。
国土交通省の建設業許可事務ガイドライン(令和4年5月31日施行)Ⅲ-1-3-(8)には、「健康保険、厚生年金保険及び雇用保険について、適正に加入していることを確認すること」と明記されており、これは実質的に許可要件の一つとみなされます。法人であれば、代表者を含む全ての従業員が原則として社会保険の適用対象となります。
大阪府の建設業許可申請においても、これらの社会保険への加入状況は申請書類の一部として提出が求められ、未加入の場合は許可が認められない、あるいは保留となる可能性があります。
公共工事の入札参加を希望する場合に必須となる経営事項審査(経審)においても、社会保険の加入状況は評価項目の一つとされています。
経審の評価項目である「社会性等(W点)」において、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況が細かく点数化されます。これらの保険に未加入である場合や、加入状況が不適正であると判断された場合は、W点の評価が大きく減点されることになります。これは、総合評定値(P点)の低下に直結し、結果として公共工事の受注機会の減少につながります。
(経営事項審査の項目)
建設業法 第27条の23
経営事項審査は、次に掲げる事項について行なうものとする。
一 経営状況
二 経営規模
三 技術力
四 その他の客観的事項(社会保険加入状況の評価)
建設業法 第27条の24
国土交通大臣は、前条第四号の客観的事項について、その適正な評価のため、建設業者の健康保険法、厚生年金保険法及び雇用保険法の規定による届出の義務の履行状況について、加点を行うことができるものとする。引用元: e-Gov法令検索 建設業法
上記条文に基づき、社会保険の加入状況は客観的事項として評価され、適正加入には加点が行われる仕組みです。
一人親方や従業員を雇用していない個人事業主の場合、健康保険は国民健康保険、年金は国民年金への加入が原則となります。ただし、労働者災害補償保険については、一人親方労災保険特別加入制度を利用することで、業務中の事故に備えることが可能です。これは建設業許可の直接的な要件ではありませんが、元請からの信頼獲得や、自身の安全確保のために検討されることが一般的に推奨されます。
従業員を雇用する個人事業主の場合、上述の通り、雇用保険・労災保険は従業員を1人でも雇用すれば強制適用事業所となります。健康保険・厚生年金保険も、常時5人以上の従業員を使用する建設業の事業所は強制適用事業所となります。自身の事業形態に合わせて、適切な社会保険への加入状況を確認することが大切です。
社会保険への未加入は、事業の継続性や将来性に関わる重大なリスクを伴います。
最も直接的なリスクの一つは、建設業許可が取得できない、あるいは更新できない可能性です。許可事務ガイドラインに明記されている通り、社会保険への加入状況は許可審査の際に確認される項目です。未加入の場合、許可申請が不許可となったり、更新が認められなかったりするケースが考えられます。許可がなければ、請負金額500万円以上の工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上または木造延べ面積150㎡以上)を受注することができなくなり、事業の規模拡大に大きな制約が生じます。
公共工事の入札参加を検討している場合、社会保険の未加入は経審の評価に直接的な悪影響を与えます。社会性(W点)での減点は、総合評定値(P点)の低下につながり、結果として入札参加資格が取得できない、あるいは希望するランクでの入札が難しくなるでしょう。これは、公共工事からの収益機会を失うことを意味します。
社会保険各法(健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法など)には、事業主の加入義務が明記されています。未加入が発覚した場合、厚生労働省や日本年金機構、ハローワーク、労働基準監督署などの行政機関から、加入指導や勧告を受けることがあります。これに従わない場合、最悪のケースでは罰則の適用や、過去に遡って保険料の一括徴収が行われる可能性も考えられます。
例えば、雇用保険法 第83条には、事業主が届出を怠った場合の罰則規定が設けられています。
社会保険への不適切な対応は、企業としての信用を大きく損なう可能性があります。元請業者や取引先からは、法令遵守意識の低い事業者と見なされ、契約の打ち切りや新規取引の見送りにつながることも考えられます。また、従業員の立場から見ても、社会保険の未加入は雇用主としての責任を果たしていないと映り、従業員の士気の低下や離職につながるだけでなく、優秀な人材の確保が困難になるなど、労務管理上の大きな問題を引き起こす可能性もあります。
ここでは、社会保険の主な加入手続きについて、大阪府を管轄する機関を中心に簡潔に解説します。詳細な手続きは事業所の状況によって異なるため、ご自身の状況に合わせて各機関にご確認ください。
これらの手続きは、原則として年金事務所で行います。
大阪府内の事業所であれば、大阪府内の各年金事務所が管轄となります。必要書類には、法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、事業主の世帯全員の住民票、従業員の雇用契約書、賃金台帳などが一般的に挙げられます。
雇用保険の手続きは、原則としてハローワーク(公共職業安定所)で行います。
大阪府内の事業所であれば、事業所の所在地を管轄するハローワークが窓口です。必要書類には、法人登記簿謄本、事業所の所在地が確認できる資料、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、雇用契約書などが一般的に挙げられます。
労災保険の手続きは、原則として労働基準監督署で行います。
大阪府内の事業所であれば、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署が窓口です。必要書類には、法人登記簿謄本、事業所の所在地が確認できる資料、賃金台帳などが一般的に挙げられます。
上記の手続きには、各機関で共通して必要となる書類(法人登記簿謄本、事業所の所在地がわかる資料など)と、各保険固有の書類があります。また、提出期限もそれぞれ異なるため、余裕を持った準備が大切です。
ご自身でこれらの手続きを行うことも可能ですが、多岐にわたる書類作成や、各行政機関とのやり取りには専門知識と時間が必要となる場合があります。社会保険の手続きそのものの代行費用は、社会保険労務士の報酬規定や事務所によって異なりますが、一般的な新規適用で数万円から数十万円が目安となる場合があります。建設業許可申請と同時に依頼する場合は、社会保険加入が許可要件の一部となるため、包括的なサポートとして検討される建設業者様もいらっしゃいます。
建設業者の皆様からよくいただく社会保険に関するご質問にお答えします。
A1. 従業員を雇用しているかどうかで対応が異なります。
ご自身の事業規模と従業員の状況に合わせて、加入義務の有無を確認することが重要です。
A2. 短期間のアルバイトやパートタイマーであっても、所定の労働時間や日数によっては社会保険の加入対象となる場合があります。一般的に、正社員の所定労働時間・日数の4分の3以上働く場合は加入対象となります。また、特定の条件を満たすことで、4分の3未満の短時間労働者でも健康保険・厚生年金保険の適用対象となるケースもあります。個々の労働者の雇用条件を確認し、判断することが必要です。
A3. 社会保険の加入は、法令で定められた事業主の義務であり、適用事業所と適用対象者に該当する従業員は、原則として本人の意思に関わらず加入する必要があります。従業員が加入を希望しない場合でも、事業主は法律に基づき手続きを進める義務があります。労使間の認識の違いからトラブルに発展することもあるため、事前に社会保険の重要性や制度について説明を行い、理解を求めることが肝要です。
A4. 未加入状態が発覚した場合、行政機関(年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署など)から加入指導や勧告を受けることになります。これに従わない場合は、罰則の適用や、過去に遡って最大2年間分の保険料が追徴される可能性も考えられます。また、建設業許可の取得・更新が難しくなったり、経営事項審査で評価が下がったりするなど、事業運営に多大な影響を及ぼすリスクがあります。
このコラムでは、建設業における社会保険加入の義務と、それが建設業許可の取得・維持、そして経営事項審査にどのように影響するかについて解説しました。社会保険への適正な加入は、法令遵守の観点だけでなく、事業の信用力向上、公共工事受注機会の確保、そして従業員の定着と福利厚生の充実といった多角的なメリットをもたらします。
社会保険の手続きや建設業許可申請は複雑であり、多岐にわたる専門知識を要することが一般的です。ご自身の状況に合わせて、必要な手続きを着実に進めることが、健全な事業運営と発展への第一歩となります。
建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の申請については管轄行政庁または専門家にご確認ください。建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
といったお悩みのある方は、
まずは一度ご相談ください。