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一人親方と建設業許可

2022.04.07

この記事の監修
松原元

社会保険労務士 行政書士 
公認 不動産コンサルティングマスター

松原 元

平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の 許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。

この記事の監修
松原元

社会保険労務士 行政書士 
公認 不動産コンサルティングマスター

松原 元

平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。

一人親方というのは個人事業の一形態ですが、ご自身で自分が一人親方だとご理解されている方に向けて今後の戦略の参考にしてもらえる内容を説明していきます。CCUS(建設キャリアップシステム)やインボイス制度など今まで以上に建設業界に大きな変革が迫っています。制度に振り回されずに、事業を継続するために一番大事なのは自分の立ち位置を把握することです。この記事を読んで、今後について、自分自身がどうしたいかを考えるきっかけにして下さい。

一人親方とは

建設業界では事業主のことを親方といいますが、従業員がいない個人事業主のことを一人親方といいます。他の業界では、あまり聞いたことがない言い方ですが建設業界の構造的な問題から生まれた形態でしょう。通常、建設業界では工事を施主から受注した事業者が元請けとなって、自社では対応出来ない部分を下請けに発注する構造となっていますが、さらに孫請け、ひ孫請けといわれる2次、3次も常態化しています。これは建設業界は派遣禁止事業となっており、工事ごとに必要になる労働力が違うため常に一定の労働力を雇用することが難しいため、下請けに頼らざるを得ないことからおこっている問題だと考えています。そのため、下請けから孫請け、ひ孫請けと下層に仕事がおりていくにつれて請負する事業者の規模が小さくなり、実質的には雇用に近い形で応援にはいる職人を個人事業主とすることで現場で仕事を請けてもらう為の方便として一人親方が誕生したのでしょう。

雇用と請負

元請けした事業者が自社だけで工事に対応出来れば、一人親方の存在意義はありませんがゼネコンと言われる大企業においても工事を自社だけで対応することは出来ず、下請け工事が必要になります。これは、先ほども述べたように工事によって必要な労働力の変動する幅が広く、雇用の形態では対応出来ないからです。
そのため、実質的に元請けの指揮命令下にあったとしても下請けとして請負することで工事ごとに労働力の需給を調整が出来る意義があります。

下請けと労働災害

建設業では、現場での安全衛生について、発注者・元請け・下請け事業者のそれぞれに安全対策の義務が課されています。原則としては現場全体の安全衛生は元請事業者がおっていますが、近年では個々の下請事業者に対しての保険加入の

事業者への指導の結果でしょう。

一人親方の今後

建設業界における一人親方とは、労働力の需給の調整弁としての役割で意義のある存在ですが、建設業界の地位向上や法令順守という観点からは、今後減少していくのではないでしょうか。
社会保障や納税等の面で、一人親方はどうしても不利な状況となっていくからです。特にCCUS(建設キャリアアップシステム)とインボイス制度が本格的に稼働した際には、一人親方自身の事務負担が大きくなるため、一人親方側のメリットが少なくなってしまいます。

CCUS(建設キャリアアップシステム)

先ほどからも何度かお伝えしているCCUSですが、建設キャリアアップシステムという建設業に関わる技能者の資格・社会保険加入状況・現場の就業履歴等の情報を把握して適正な評価をおこなう為のものと言われています。公共工事にかかわる場合は、このCCUSの導入・運用が義務化されており、今後は民間工事でも義務化されることが推測されています。技能者のメリットとして、今までは不明確だった現場での就業日数が可視化されたり職長経験が証明出来たり、建設業退職金共済の受給がスムーズに出来たりということがありますが、中小・零細企業はもとより一人親方からは当面負担になっている実感です。
しかし、大手ゼネコンでも建設キャリアアップシステムの登録が推奨されており下請けとして工事を受注する場合には、早期に対応することが今後に繋がります。下記に導入のメリットとデメリットを記載しますので導入の参考にして下さい。

CCUS導入のメリット

・キャリアや技能を見える化することが出来、取引業者へアピール出来ます。

・勤怠管理の効率を高め、マネジメントの活用にも繋げることが出来ます。

・CCUS対応事業者として、適正な雇用環境をアピールして求人にも繋げることが出来ます。

CCUS導入のデメリット

・導入にコストがかかる

・運用に手間がかかり、問い合わせがネットのみでサポート体制が悪い

インボイス制度

制度の概要

このインボイス制度というのは、2023年10月に導入が確定している消費税の税制変更です。消費税は売上を請求したときに預かっている消費税から支払った仕入や経費に含まれている消費税を差し引くことが出来る仕入税額控除というものがあり、課税事業者は下請け等に支払った外注費などのうち消費税分については仕入税額控除として自社の消費税を減少させることが出来ます。そしてこれまでは、年間売上が1,000万円未満の事業者は消費税を売上として受け取っても消費税の納税義務が免除されていました。しかし、このインボイス制度によってインボイス発行事業者として適格請求書を発行出来ない免税事業者の場合には、その請求分については上記の仕入税額控除が認められないことになります。その為、課税事業者である元請事業者は下請事業者に対して、適格請求書の発行か消費税分の値引きの要求が始まることが予想されます。
いずれにしても今まで免税事業者だった一人親方からすると、消費税の納税義務か値引きによって収入が減少することになります。

簡易課税制度での対策

課税事業者になることを決めた事業者は、消費税の納税が必要となるわけですが消費税の申告方法には「本則課税」と「簡易課税」の2つがあります。本則課税というのは、売上高に対する消費税から、仕入に対する消費税を差し引いて計算するもので仕入が少ない事業者は消費税の納税額を多くなるのと消費税を計算するための手間が多くかかります。これに対して、簡易課税は売上高に応じて業種毎に決められた「みなし仕入れ率」によって簡易に消費税額を決める制度です。仕入れが少ない事業者であれば、こちらの制度を選択することで経理負担と消費税負担を軽減することが可能です。この簡易課税を選択する為には、事前の届出が必要となりますので注意が必要です。また、一度選択をすると2年間は変更が出来ません。その為、仕入れが多く発生したことで本則課税の方が税額的なメリットがある場合でも一律にみなし仕入れ率によって計算した税額を納税する必要があります。

インボイス制度実施に当たっての経過措置について

インボイス制度の実施は、様々な団体から廃止や延長の要望がありますが2022年11月現在、2023年10月から実施されることが確定しています。しかし、事業者への多大な影響から適格請求書の発行が出来ない免税事業者等からの仕入れについても一定割合が控除可能な経過措置が設けれらています。具体的には下記の期間と割合になります。

・令和5年10月1日から令和 8年9月30日:仕入税額相当額の80%

・令和8年10月1日から令和11年9月30日:仕入税額相当額の50%

この期間については、取引業者も一定割合については消費税額の負担が軽減されることになる為、適格請求書発行に対応していない場合でも影響が抑えられる可能性があります。

とは言え、適格請求書が発行出来ない事業者との取引を中止する、もしくは消費税分の値引き要求がされる可能性が考えられますので早期の対応が必要です。

一人親方の建設業許可取得に向けて解説

以上のことから一人親方の存続自体が危ぶまれる状況となっております。そのため、今後も一人親方を続ける場合には建設業許可を取得する必要性は低いと考えます。
現在、一人親方の方は今後3つの選択肢があります。
・事業を拡大して一人親方から脱却する
・元請事業者などに雇用され、一人親方を辞める
・何も対策せず、一人親方を続ける

建設業許可の取得

今現在、一人親方で建設業許可の取得を考えているならば、事業の拡大もセットで検討するべきです。一人親方のままでは事業の拡大は難しいため、取得する許認可を有効に活用するためにも雇用が必要となるでしょう。許可の取得にあたっての検討事項としては、既存事業の延長として個人事業で許可を取得するか法人化をするかどうかでしょう。

一人親方が法人化するメリット・デメリット

建設業許可の取得のタイミングで法人化を検討するかたは多いですが、法人化が必要かどうかについて検討をお勧めします。
以下に、メリットとデメリットについて列記しますので参考にして下さい。

一人親方が法人化するメリット

・社会的な信用の向上
・給与所得控除による節税効果
・家族への給与支払による所得分散
・生命保険の経費化などの経費枠の拡大
・事業資金の借入の際に連帯保証免除
・赤字の際に欠損金9年間繰り越し

一人親方が法人化するデメリット

・設立の登記費用の負担
・法人市民税、法人住民税の税負担
・社会保険の加入義務

まとめ

一人親方というのは建設業界の発展の中で重要な役割がありましたが、社会保険制度や安全衛生の義務などの厳格化により今後は一人親方ではなく、通常の事業者もしくは労働者への転換が見込まれてくるのではないでしょうか。
通常の事業者として転換をされる場合は、事業の拡大のために建設業許可の取得も検討されてはいかがでしょうか。
今後、建設業をされる場合には建設業工事の工事額が500万以下かどうかに関わらず事業者としての信頼から許可を取得していることが事業規模の拡大への近道だと考えます。
ご自身で建設業免許の取得が可能かどうかなど、不安や質問がある方は、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡下さい。
初回のご相談は無料で対応させて頂きます。

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