ブログ記事
2026.07.01
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の
許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
建設業の皆様にとって、事業の拡大や公共工事への参入を目指す上で、建設業許可の取得、そして経営事項審査(経審)での高評価は重要な課題です。経審の評価項目の中でも、「完成工事高」は総合評定値(P点)に大きく影響します。しかし、「完成工事高をどう計上すれば良いのか」「複数の業種を持つ場合、どのように扱われるのか」といった疑問をお持ちの方も少なくないかもしれません。
本記事では、建設業許可における完成工事高の基本的な考え方から、経営事項審査での計上方法、さらに業種間振替という制度を活用した評価向上策まで、大阪府の申請実務を踏まえて詳細に解説します。当事務所は、建設業許可申請を主軸に、建設業者の皆様が事業を円滑に進められるよう、日々サポートしております。
建設業許可を持つ事業者の皆様にとって、「完成工事高」は単なる売上高ではなく、企業の施工能力や事業規模を示す重要な指標です。まずは、完成工事高の基本的な定義と、それが建設業許可や経営事項審査(経審)にどのように関わるのかをご説明します。
建設業法において、完成工事高は「請負契約に基づいて完成させた建設工事の代価」を指します(建設業法 第2条)。これは、請け負った建設工事が完成し、引き渡しが完了した時点で計上される金額です。原則として、税抜きで計上されます。
完成工事高は、建設業許可を維持していく上で、毎事業年度終了後に提出する「決算変更届(事業年度終了届)」において、工事経歴書とともに記載が求められます。この届出は、許可業者が建設工事の状況を定期的に行政庁に報告する義務を果たすものであり、許可の更新時にも重要な資料となります。
参照: 国土交通省「建設業法」
https://www.mlit.go.jp/common/001402324.pdf
公共工事の入札に参加するためには、建設業許可に加えて、経営事項審査(経審)を受ける必要があります。経審では、企業の経営状況、経営規模、技術力、その他の社会性について総合的に評価し、その結果を点数化した総合評定値(P点)が算出されます。
このP点の算出において、完成工事高は「X1(年間平均完成工事高)」として評価される重要な項目です。X1点は、過去2年間または3年間の年間平均完成工事高に基づいて算出され、企業の施工能力や実績を示す指標となります。完成工事高が高いほど、X1点の評価も高くなる傾向にあり、ひいては総合評定値の向上に繋がる可能性があります。
経審の申請においては、完成工事高の計上が適切に行われているか、税務申告書などの客観的な資料と整合性が取れているかが厳しく審査されます。
完成工事高の計上は、経審の点数に直結するため、その基本的な方法を正しく理解しておくことが重要です。ここでは、会計処理や税務申告との関連性について解説します。
完成工事高は、請負契約に基づいて工事が完成し、お客様への引き渡しが完了した時点で計上するのが原則です。会計処理には主に以下の2つの基準があります。
経審の審査において、完成工事高は原則として税抜金額で計上されます。消費税は含めないため、計上時には注意が必要です。
経審申請時に提出する完成工事高は、税務申告書(法人税申告書別表十一(一)や別表二等)の記載内容と整合性が取れている必要があります。これは、税務申告書が客観的な財務資料として信頼性が高いとされているためです。
具体的には、経審の申請書類の一つである「工事経歴書(様式第2号)」に記載する完成工事高の合計金額が、法人税申告書や消費税確定申告書に記載された売上高と概ね一致していることが求められます。もし大きな乖離がある場合は、その理由を説明できるよう準備しておく必要があります。大阪府の申請においても、こうした税務申告書との整合性は厳しく確認されます。
参照: 国税庁「法人税の申告書・添付書類」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/01.htm
建設業許可では29種類の業種に分類されており、複数の業種の許可を持っている事業者も少なくありません。このような場合、完成工事高をどの業種で計上するかが、経審の評価に影響を与えることがあります。ここでは、「業種間振替」という制度とその活用について解説します。
一つの工事が複数の作業内容を含む場合、原則として、その工事の主たる部分の業種で完成工事高を計上します。例えば、建物解体工事を行った場合、解体作業が主たる工事であれば「解体工事」として完成工事高を計上します。
しかし、主たる工事に付随して行われる付帯工事については、例外的に主たる工事の業種に含めて完成工事高を計上できる場合があります。例えば、建築一式工事において、その建物に設置する簡単な電気配線工事や給排水管工事などは、それぞれ個別の電気工事や管工事としてではなく、建築一式工事に含めて計上することが認められるケースが考えられます。ただし、この判断は工事の内容によって異なり、過度な振替は認められない可能性があります。
建設業法施行規則 第1条の2には、「二以上の建設工事について許可を受けた者が、その申請に係る建設工事の業種に係る完成工事高の合計額を当該建設工事の業種以外の業種に係る完成工事高の合計額に振り替えて申請することができる」旨が定められています。これが「業種間振替」と呼ばれる制度です。
業種間振替は、主に以下のような目的で活用されます。
業種間振替を行うには、いくつかの要件があります。一般的に、以下の点に注意が必要です。
参照: e-Gov法令検索「建設業法施行規則」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=349M50000400014
業種間振替の具体的な解釈や審査基準は、都道府県によって若干異なる場合があります。大阪府の場合も、建設業法および建設業法施行規則の規定に基づき、適正な振替であるかどうかが慎重に審査されます。
特に、振替の根拠となる工事の内容が、振替先の業種として合理的に説明できるかどうかが重視される傾向にあります。例えば、管工事を行う際に、その配管を埋設するための簡易な土工事が行われた場合、その土工事部分を「管工事」の完成工事高に含める、あるいは「土木一式工事」の完成工事高に振替えるといったケースが考えられます。しかし、振替元の工事と振替先の業種との関連性が低い場合は、認められない可能性もあります。
大阪府で業種間振替を検討される際は、事前に大阪府の担当窓口や、建設業許可申請に詳しい専門家にご相談いただくことを推奨します。当事務所では、大阪府の申請実務・審査傾向を熟知しており、具体的なケースに応じたアドバイスを提供できます。
業種間振替は、単に完成工事高を移動させるだけでなく、経営事項審査の総合評定値(P点)を戦略的に向上させるためのツールとして活用できます。ここでは、P点への影響と、振替の具体的なポイントについてご説明します。
経審の総合評定値(P点)は、以下の要素の合計点で構成されます。
このうち、X1(年間平均完成工事高)は、各業種の完成工事高を評価する項目です。業種間振替を適切に行うことで、特定の業種の完成工事高を積み増し、その業種のX1点を高めることが期待できます。特に、自社が将来的に公共工事の受注を強化したいと考えている業種や、技術者数が多く評価の高い業種に完成工事高を集中させることで、P点全体の底上げを図れる可能性があります。
例えば、複数の業種でわずかな完成工事高がある場合、それぞれが低い点数となるよりも、関連性の高い業種に集約して計上することで、一つまたは複数の業種で高いX1点を得ることができ、結果として企業全体の総合評定値が向上する可能性があります。
業種間振替を戦略的に活用するためには、以下のポイントを考慮することが推奨されます。
完成工事高の計上においては、様々な疑問が生じることがあります。ここでは、特に質問の多い項目について解説します。
経営事項審査における完成工事高は、原則として消費税抜きの金額で計上します。消費税を含めて計上してしまうと、実際の売上高よりも過大に評価されてしまうためです。税務申告書を確認する際も、消費税抜きの売上高を参照することが一般的です。
複数の建設業者が共同で一つの工事を請け負う共同企業体(JV)の場合、完成工事高は各JV構成員の出資比率に応じて計上します。例えば、出資比率が30%であれば、JV全体の完成工事高の30%を自社の完成工事高として計上することになります。この際も、JV契約書など、出資比率を証明できる資料を準備しておく必要があります。
建設業者として元請工事だけでなく、下請工事も行っている場合、下請工事の完成工事高も自社の完成工事高として計上することができます。元請工事、下請工事の区別なく、請け負った建設工事が完成し、引き渡しが完了した時点で収益として計上されるものは、すべて完成工事高に含まれます。
ただし、下請工事の場合は、発注者からの工事代金が元請会社を経由して支払われるため、売上計上時期や金額の確認が重要になります。契約書や請求書、入金記録などを正確に保管しておくことが求められます。
建設業許可の取得や経営事項審査の申請は、企業の財務状況や技術力だけでなく、社会保険や労務管理の状況も重要な評価項目となります。行政書士と社会保険労務士の両資格を持つ当事務所では、建設業に関わる労務管理についても横断的にサポートしております。
建設業法 第27条の23では、建設業者に対し、社会保険等(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入を義務付けています。特に法人事業所や常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。
経営事項審査では、「社会性等(W点)」の評価項目の一つとして、社会保険の加入状況が評価されます。健康保険・厚生年金保険・雇用保険のすべてに適切に加入している場合、加点対象となりますが、未加入や一部未加入の場合には、減点または審査対象外となる可能性も考えられます。許可の更新時にも社会保険の加入状況が確認されるため、適正な加入と手続きは必須です。
参照: 国土交通省「建設業の社会保険等未加入対策について」
https://www.mlit.go.jp/totikou/const/totikou_const_tk1_000067.html
従業員を雇用している建設業者にとっては、雇用保険および労災保険の加入も法令上の義務です。
これらの保険についても、経審の社会性(W点)の評価対象に含まれるため、適正な加入手続きと保険料の納付が求められます。未加入や手続きの不備は、経審の評価に影響を与えるだけでなく、法令違反として行政指導の対象となる可能性もあります。
当事務所は、建設業許可申請だけでなく、社会保険労務士としての専門知識を活かし、建設業に関わる社会保険・雇用保険・労災保険の新規適用から各種手続き、労務管理に関するご相談まで、横断的にサポートいたします。適切な労務管理は、企業の健全な経営基盤を築く上で不可欠です。
A1: 原則として、振替元となる工事が、振替先の業種の実態を伴う必要があります。例えば、電気工事に付随する足場工事を建築一式工事に振替えるといったことは、その関連性や実態を合理的に説明できない限り、難しいかもしれません。また、振替を行うには、振替元・振替先の両方の業種において専任技術者が配置されていることが求められます。不明な点があれば、管轄の行政庁や専門家との事前相談を推奨します。
A2: 経審申請時には、完成工事高を証明するために、法人税申告書(別表十一(一)など)、消費税確定申告書、工事経歴書などが一般的に必要となります。さらに、工事の内容によっては、請負契約書、請求書控え、領収書、図面、現場写真などが追加で求められることもあります。これらの書類は、税務署への申告内容と整合性が取れていることが重要です。
A3: 不適切な振替や、実態を伴わない振替は、虚偽申請と見なされ、行政処分を受けるリスクがあります。また、特定の業種に完成工事高を集中させることで、他の業種の完成工事高が相対的に低くなり、その業種単体での評価が伸び悩む可能性も考えられます。総合的な事業戦略と照らし合わせ、慎重に判断することが重要です。
建設業許可における完成工事高の適切な計上は、経営事項審査の総合評定値に直結する重要な要素です。特に複数の業種で事業を展開されている場合、業種間振替の制度を理解し、戦略的に活用することで、経審での評価向上に繋がる可能性があります。
しかし、完成工事高の計上や業種間振替には、建設業法や会計基準、税法に関する専門知識が求められ、書類作成にも細心の注意が必要です。また、建設業に関わる社会保険や雇用保険といった労務管理も、許可の維持や経審の評価に横断的に影響します。
当事務所では、大阪府を中心に建設業許可の取得から更新、経営事項審査の申請、そして労務管理まで一貫してサポートしております。完成工事高の計上方法や業種間振替の活用についてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の申請については管轄行政庁または専門家にご確認ください。建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
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