ブログ記事
2026.09.20
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の
許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
建設業を営む皆様、重要な法改正をご存知でしょうか?令和7年(2025年)2月1日から、特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額が引き上げられました。
この改正は、貴社の事業計画や許可取得戦略に大きな影響を与える可能性があります。これまで特定建設業許可が必要だった工事が、一般建設業許可で対応できるようになったり、逆に発注者との間で旧基準による誤解が生じたりするケースも考えられます。
当事務所では、大阪府を拠点とする行政書士・社会保険労務士として、この基準額改正のポイントと、貴社が取るべき実務上の対応について詳しく解説いたします。ご自身の事業にどのような影響があるのか、正しい理解を深めていきましょう。
本記事のポイント
特定建設業許可は、建設工事を下請けに発注する際の基準額によって、その必要性が決まります。この基準額が、建設業法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第17号)により、令和7年(2025年)2月1日から引き上げられました。
まず、建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。建設業法 第3条では、建設業を営む者は許可を受けなければならないと定められており、その上で元請として下請契約を締結する際の金額に応じて、どちらかの許可が必要となります。
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った建設工事について、下請業者に発注する下請代金の合計額が一定の基準額以上になる場合に必要となります。これは、下請業者保護の観点から、元請業者により厳格な責任が求められるためです。
今回の改正で、特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額は、以下のとおり引き上げられました(建設業法 第27条の13、建設業法施行令 第2条)。
| 工事の種類 | 旧基準(~2025年1月31日) | 新基準(2025年2月1日~) |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,500万円以上(税込) | 5,000万円以上(税込) |
| 建築一式工事 | 7,000万円以上(税込) | 8,000万円以上(税込) |
つまり、建築一式工事以外では500万円、建築一式工事では1,000万円の引き上げとなります。
この改正は、建設業における物価変動や賃金上昇などの実態に即した基準額の見直しと、中小建設業者の皆様の負担軽減を目的としたものです。
特定建設業許可は、一般建設業許可よりも厳格な要件(財産的基礎、常勤役員等の経営経験、専任技術者の資格等)が求められます。基準額を引き上げることで、より多くの工事を一般建設業許可で対応できるようになり、特定建設業許可の取得・維持にかかる時間やコストを節約できる可能性があります。
今回の基準額変更は、貴社の建設業許可の要否や事業戦略に直接的な影響を及ぼします。
具体的な工事例で、新旧基準による許可要否の判断を見てみましょう。
旧基準での判断:下請代金合計が4,500万円以上のため、特定建設業許可が必要でした。
新基準での判断:下請代金合計が5,000万円未満のため、現在の一般建設業許可で対応可能です。
旧基準での判断:下請代金合計が4,500万円以上のため、特定建設業許可が必要でした。
新基準での判断:下請代金合計が5,000万円未満のため、現在の一般建設業許可で対応可能です。
旧基準での判断:下請代金合計が7,000万円以上のため、特定建設業許可が必要でした。
新基準での判断:下請代金合計が8,000万円未満のため、現在の一般建設業許可で対応可能です。
この改正により、貴社の事業形態に応じて以下のような影響が考えられます。
先日、電気工事業を営むある建設業者様から、次のようなご相談がありました。「大型商業施設の電気工事を元請として受注する予定ですが、下請に発注する金額が4,500万円になります。発注者から『特定建設業許可が必要』と言われたので、一般から特定に変更したいと急いでいます。」
この建設業者様は、発注者様の説明に基づき、特定建設業許可の取得が必須だと考えていらっしゃいました。しかし、私が基準額改正の事実を説明したところ、以下の点が判明しました。
発注者様のご担当者が旧基準(4,500万円以上)で判断されていたため、一時的に誤解が生じていたものと考えられます。このご説明により、建設業者様は不要な特定建設業許可の取得を回避され、増資費用や申請手数料、行政書士報酬といったコスト、そして申請にかかる時間(およそ3~4ヶ月)を節約することができました。
このように、法改正の情報を正確に把握し、ご自身の状況に当てはめて判断することが、貴社の事業にとって非常に重要です。
発注者から「特定建設業許可が必要」と言われた場合でも、すぐに特定建設業許可の取得を検討するのではなく、まずは以下の点を確認し、発注者との認識合わせを行うことが重要です。
複数の下請業者に分割して発注する場合、それらの合計額で特定建設業許可の要否を判断します。改めて、対象となる工事の下請代金合計額を正確に算出してください。
合計額がこれらの基準未満であれば、原則として一般建設業許可で対応可能です。
発注者の担当者が、旧基準(2025年1月31日までの基準)で判断している可能性があります。その場合は、以下の事項を発注者に丁寧にご説明ください。
説明のポイント:
中には、契約書や入札仕様書に「特定建設業許可を有する者」という条件が明記されている場合があります。この場合、発注者が基準額改正を理解したとしても、契約条件として特定建設業許可を求めることがあります。
このようなケースでは、発注者と協議し、条件の変更が可能かを確認してください。契約条件として明記されている場合は、基準額の要否とは別に特定建設業許可が必要となる可能性があるため、注意が必要です。
基準額改正により、現時点では一般建設業許可で対応できる工事も増えましたが、将来的に事業を拡大していく上で特定建設業許可が必要になる可能性も十分考えられます。次のような場合、特定建設業許可の取得を検討する価値があります。
今後、元請として、下請代金合計が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となる大規模工事の受注機会が増える見込みがある、または元請としての事業を積極的に拡大する予定がある場合、特定建設業許可の取得は貴社の事業拡大の大きな武器となります。
公共工事の入札や、大手建設会社・デベロッパーなどが発注する工事では、「特定建設業許可を有する者」という条件が、入札参加資格や契約条件として明記されていることがあります。
この場合、下請代金基準額に関わらず、特定建設業許可が必須となりますので、事前に発注条件をしっかりと確認することが重要です。
特定建設業許可は、一般建設業許可と比較して、経営管理体制や財務基盤の健全性など、より厳格な要件が求められます。そのため、特定建設業許可を持つことは、次のようなメリットにつながり、貴社の信用力を高める上で非常に有効です。
これらのメリットを考慮し、中長期的な事業戦略の中で特定建設業許可の必要性を判断することが大切です。
特定建設業許可を取得するには、一般建設業許可よりも厳しい要件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです(建設業法 第15条)。
常勤役員等(旧:経営業務の管理責任者)として、特定建設業に関する2年以上の経営経験が必要です。
具体的には、過去に元請として、下請代金の合計額が旧基準(建築一式工事以外4,500万円以上、建築一式工事7,000万円以上)または新基準(建築一式工事以外5,000万円以上、建築一式工事8,000万円以上)の工事を請け負った実績を、工事契約書、下請契約書、請求書等の一次資料で証明する必要があります。
特定建設業の専任技術者は、一般建設業よりも高度な資格または経験が求められます。具体的には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
専任技術者については、建設業許可の要!専任技術者の指定学科と実務経験を証明する方法【大阪府対応】でも詳しく解説していますので、ご参照ください。
特定建設業の財産的基礎要件は、一般建設業許可(自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力)よりもはるかに厳格です。次の3つの要件すべてを満たす必要があります。
特に、自己資本4,000万円以上の要件を満たすためには、増資が必要となる会社様が多くいらっしゃいます。また、これらの要件を許可取得後も毎年の決算で維持し続ける必要があるため、計画的な財務管理が不可欠です。
社労士の観点からは、財務基盤の健全化は、適切な労務管理や社会保険の適正な加入によっても支えられます。これらは企業の信用力を高め、経営事項審査(経審)の評価にも影響を与える要素です。許可の取得・維持と並行して、労務管理体制の整備もご検討いただくことをお勧めします。
一般建設業許可をお持ちの会社様が特定建設業許可を取得する場合、「般・特新規」申請を行います。以下に、一般的なスケジュールと費用目安を示します。
これらを合計すると、およそ3〜4ヶ月程度の期間を見込んでおくのが一般的です。
これらを合計すると、増資が必要な場合は50万円〜80万円程度のコストがかかることが一般的です。
これらの費用はあくまで目安であり、会社の状況や依頼する専門家によって変動します。また、増資は必ずしも必要ではなく、既存の自己資本で要件を満たせる場合もあります。
A1: 令和7年(2025年)2月1日から適用されます。この日以降に契約を締結する工事に適用されるのが原則です。
A2: 必ずしも切り替える必要はありません。新基準の下請代金合計額(建築一式工事以外5,000万円未満、建築一式工事8,000万円未満)であれば、一般建設業許可で対応可能です。貴社の事業計画や今後受注する工事の規模を考慮し、本当に特定建設業許可が必要かどうかを判断してください。
A3: 特定建設業許可は、常勤役員等の経営経験、専任技術者の資格・経験、財産的基礎の全てにおいて、一般建設業許可よりも厳格な要件が求められます。特に財産的基礎については、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上、欠損比率や流動比率の基準など、財務面での厳しい基準が設けられています。
本記事では、令和7年2月1日から特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額が変更されたことについて解説しました。
基準額改正は、建設業を営む皆様にとって重要な情報です。正しく理解し、適切に対応することで、不要なコストを避け、事業を円滑に進めることができます。この記事が、皆様の建設業経営の一助となれば幸いです。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の申請については管轄行政庁または専門家にご確認ください。建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
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