ブログ記事
2026.09.28
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の
許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
「建設業許可を取りたいのですが、実は登記上の役員の一人が、実際の業務にはほとんど関与しておらず、いわゆる『名前だけの役員』なんです。これって問題ありますか?」
このようなご相談をいただくことがあります。登記上の役員の一人が、実際の経営判断や業務にほとんど関与しておらず、「名前だけ」という状況で建設業許可を申請したい、というケースです。安易に「大丈夫です」と答えることはできません。
建設業許可申請において、実態のない役員を登記したまま申請することは、虚偽申請のリスクを伴い、最悪の場合、許可の取り消しや刑事罰の対象となる可能性があります。
この記事では、建設業許可申請における「名義上の役員」問題がなぜ危険なのか、その本質的なリスクと、専門家としてどのように対応すべきかを解説します。大阪府で建設業許可をお考えの皆様が、適切な判断を下し、健全な事業運営を進めるための情報提供を目指します。
建設業許可申請における「名義上の役員」とは、会社の登記簿謄本には役員として記載されているものの、実際には会社の業務や経営判断にほとんど関与していない方を指します。
多くの場合、家族親族が登記上役員になっているケースや、過去に役員だった方がそのまま登記に残っているケースなどが見受けられます。しかし、このような実態と登記が乖離した状況は、建設業許可申請において様々な問題を引き起こす可能性があります。
建設業許可は、建設業者が適正な経営を行い、消費者を保護するために設けられた制度です。このため、許可を取得する会社の役員全員が、一定の要件を満たしていることが求められます。実態のない役員が登記されている場合、以下の理由から問題視されます。
建設業者は、自己の名義をもって、他人に建設業を営ませてはならない。
「名義貸し」とは、建設業許可を受けた者が、その許可を利用して実体のない他者に建設業を営ませる行為です。たとえ役員であっても、実態がないにもかかわらず登記上の役員として存在することは、この名義貸しに類する行為と見なされる可能性があります。これは、建設業の適正な運営を妨げ、許可制度の信頼性を損なう行為として厳しく禁止されています。
建設業法 第47条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
三 建設業法 第4条第1項、建設業法 第11条第2項若しくは建設業法 第15条第2項の規定による申請書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者又はこれらの規定による書類で虚偽の記載のあるものを提出した者
建設業許可申請書には、役員の氏名、役職、常勤性などを正確に記載する義務があります。実態のない役員を常勤であるかのように記載したり、本来申請書に記載すべき役員を意図的に記載しなかったりすることは、虚偽申請とみなされるリスクがあります。
虚偽申請は、上記のとおり建設業法 第47条により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性のある重大な違反行為です。
建設業法 第29条(許可の取消し)
国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。
一 建設業法 第8条各号(第一号イを除く。)又は建設業法 第17条各号(第一号イを除く。)に該当するに至つた場合
(略)
三 建設業法 第3条第1項の規定により建設業の許可を受ける者が、虚偽の申請その他不正の手段により建設業の許可を受けた場合
もし虚偽の申請によって一度許可を取得したとしても、その後に「名義上の役員」の存在が行政庁に発覚した場合、建設業法 第29条に基づき、許可が取り消される可能性があります。
許可取消し処分を受けた場合、その日から5年間は再度の建設業許可申請ができなくなり、事業継続に甚大な影響を及ぼします。
「名義上の役員」に関する誤解は、建設業者様が知らず知らずのうちにリスクを抱えてしまう原因となります。ここでは、特に注意が必要な誤解を解説します。
建設業許可申請書には、会社の登記簿謄本に記載されているすべての役員を記載する義務があります。登記されている役員を申請書に意図的に記載しないことは、それ自体が虚偽申請に該当します。また、登記されている情報は行政庁が確認できるため、隠蔽することはできません。
建設業許可では、会社のすべての役員が、誠実性や欠格要件の審査対象となります。「実務に関与していない」という理由で審査が免除されることはありません。役員全員が建設業法上の要件を満たしているか、厳しく確認されます。
許可取得後に役員変更登記(役員の退任など)を行うこと自体は可能ですが、許可取得前に実態のない役員を登記したまま申請することは、前述のとおり虚偽申請のリスクを伴います。許可取得後に発覚した場合、許可の取り消しにつながるため、事前に対処することが不可欠です。
「名義だけです」という依頼者の説明を鵜呑みにせず、役員の実態を客観的に確認することが極めて重要です。本当に実務に関与していないのか、常勤性はどうか、報酬は支払われているのか、社会保険に加入しているのかなど、具体的な資料で確認しなければ、専門家も虚偽申請に加担してしまうリスクが生じます。
建設業許可申請を進めるにあたり、「名義上の役員」の問題をクリアするためには、まず実態を正確に把握することが重要です。当事務所では、以下のようなポイントを総合的に確認し、適切な判断をサポートいたします。
役員の「実態」を判断する上で、口頭での説明だけでなく、客観的な資料に基づく確認が不可欠です。
これらの確認には、以下の資料が参考になります。
「なぜ、その方が取締役に就任したのか」「誰の判断で就任したのか」「実態のない役員として登記した理由は何か」といった経緯を確認します。また、他の実務を担う役員の方々が、問題の役員の実態をどのように認識しているかも重要な情報となります。
実態確認の結果、実態のない役員であることが明確に判明した場合、建設業許可申請前に、その役員の退任に伴う役員変更登記を検討する必要があります。
建設業許可の取得を急ぐ場合でも、この手続きの期間を考慮に入れる必要があります。
建設業許可には複数の要件があり、そのいずれも会社の役員と密接に関わってきます。「名義上の役員」が存在する場合、これらの要件の充足が難しくなることがあります。
建設業許可には、会社の常勤役員のうち、一人が経営業務管理責任者として、一定期間以上の建設業の経営業務の管理経験を有していることが求められます。実態のない役員がいる場合、誰が真に経営業務に携わっているのかを明確にし、その方が要件を満たしているかを厳密に確認する必要があります。
証明資料としては、過去の契約書、請求書、取締役会議事録、決裁権限規程などが挙げられます。
各営業所には、許可を受けようとする建設工事について一定の専門知識や実務経験を持つ専任技術者を常勤させる必要があります。この専任技術者は、役員である必要はありませんが、常勤性が厳しく問われます。
もし「名義上の役員」が専任技術者を兼ねているような場合は、その常勤性が認められないため、要件不適合となります。証明資料としては、資格合格証書や、社会保険証、雇用契約書などが用いられます。
建設業法 第8条では、建設業許可を受けられない「欠格要件」が定められています。役員全員がこの欠格要件に該当しないことが必要です。
例えば、過去に建設業法違反で営業停止処分を受けた会社の役員であった場合、一定期間は許可を取得できないことがあります。
実態のない役員であっても、登記されている以上は欠格要件の審査対象となります。もし該当する方がいれば、その方が当時どのような立場であったか(役員だったのか従業員だったのか)を客観的な資料(当時の雇用契約書、在職証明書、会社の登記簿謄本など)で確認し、慎重に判断する必要があります。
建設業許可申請においては、単に申請書を提出すれば良いというわけではありません。行政庁は、提出された書類だけでなく、会社の「実態」も厳しく審査します。
建設業許可の審査は、提出された書面上の情報と、実際の会社の状況が一致しているかを多角的に確認するものです。書類の形式的な整合性だけでなく、記載内容が事実に基づいているかを重視します。そのため、「とりあえず申請書を作って提出すれば何とかなる」という考え方は通用しません。
行政庁は、以下のような点について確認を行います。大阪府においても、これらの審査ポイントは共通です。
「名義上の役員」が存在する場合、これらの確認項目において不整合が生じ、不許可となるリスクが高まります。
もし「名義上の役員」を実態があるかのように偽って申請し、それが行政庁に発覚した場合、以下のような重大な結果を招く可能性があります。
これらの結果は、会社の事業継続に致命的な影響を与えかねません。
「名義上の役員」問題への対処は、会社の未来に直結する重要な判断です。当事務所では、以下のステップで対応を進めることを推奨しています。
依頼者の方から「名義だけ」という言葉が出た場合、まず役員の実態を徹底的に確認します。口頭での説明だけでなく、社会保険証、報酬台帳、取締役会議事録、出勤簿などの客観的な資料を基に、実際の業務関与状況を把握することが重要です。
実態確認の結果、登記上の役員が真に「名義上の役員」であることが判明した場合、建設業許可申請を行う前に、その役員の退任手続き(役員変更登記)を完了させることを強く推奨します。
役員変更登記には、一般的に以下の手続きと期間が必要です。
許可取得までの期間を考慮し、正確なスケジュールを立てる必要があります。
このような複雑な状況においては、専門家である行政書士に相談することが不可欠です。当事務所では、依頼者様の状況を詳細にヒアリングし、法令遵守の観点から最適なアドバイスを提供いたします。
虚偽申請に繋がるリスクがある案件は、行政書士としての職責に反するため、当事務所では受任を辞退する場合もございます。公正かつ誠実な業務遂行を通じて、依頼者様の会社の信用と、当事務所の信頼を守ることを最優先に考えております。
役員の実態について判断が難しい場合や、具体的なケースにおいて解釈に迷う場合は、申請先の都道府県の建設業許可担当部署に事前相談を行うことも有効です。ただし、事前相談では、依頼者様の会社名や個人名を伏せ、一般的な質問として状況を説明し、行政庁の見解を確認することが一般的です。
建設業許可申請に関して、役員の状況についてよく寄せられるご質問にお答えします。
A1: いいえ、必ずしも全員が常勤である必要はありません。建設業許可で常勤が求められるのは、原則として経営業務管理責任者と専任技術者(営業所に配置される技術者)です。これらの要件を満たす役員が常勤であれば、他の役員が非常勤であっても直ちに許可が下りないということはありません。
ただし、非常勤役員であっても、欠格要件に該当しないことは必須です。また、会社の役員である以上、会社の業務運営に対して一定の責任を負う立場にあることに変わりはありません。
A2: 報酬を支払っていない役員がいる場合、その役員が本当に「名義だけの役員」ではないか、実態を厳しく確認される可能性があります。特に、常勤が求められる経営業務管理責任者や専任技術者の役員が報酬を得ていない場合、その常勤性が疑われる重大な要素となります。
社労士の観点からも、役員であっても労働の実態がある場合は社会保険への加入が必要となるため、報酬が全く支払われていない状況は、社会保険上の適正性についても確認が必要となります。
A3: はい、影響する可能性があります。建設業許可の欠格要件(建設業法 第8条)には、過去に建設業法やその他関連法令に違反し、行政処分を受けた場合が定められています。
もし、現在の役員の中に、過去に別の会社で役員であった際に、その会社が建設業法違反などで営業停止処分などを受けていた方がいる場合、その処分から一定期間(原則5年間)は許可を受けられない可能性があります。詳細な状況を正確に把握し、個別に判断する必要がありますので、専門家にご相談ください。
建設業許可申請における「名義上の役員」の問題について解説しました。単に登記されているだけの役員が存在する場合、それは名義貸しや虚偽申請と見なされ、刑事罰や許可取消しといった重大なリスクを招く可能性があります。
このようなリスクを回避し、円滑に建設業許可を取得するためには、まず役員の実態を客観的な資料で正確に確認することが重要です。もし実態のない役員がいる場合は、許可申請を行う前に、退任手続きなどの適切な対応を完了させる必要があります。
建設業許可申請は、単なる書類作成業務ではなく、会社の経営実態を行政庁に正しく伝えるための重要な手続きです。大阪府および近畿圏で建設業許可をお考えの建設業者様が、安心して事業を継続できるよう、当事務所が丁寧にサポートいたします。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の申請については管轄行政庁または専門家にご確認ください。建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
といったお悩みのある方は、
まずは一度ご相談ください。