ブログ記事
2026.07.27
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、
ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の
許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。
資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
社会保険労務士 行政書士
公認 不動産コンサルティングマスター
松原 元
平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。
「個人で持っている建設業許可を、設立した会社の名義に変えてください」
このようなご相談は、個人事業から法人へ移行される事業者様からよく寄せられます。事業内容、代表者、従業員、営業所がほとんど変わらないため、法人化は単なる屋号や名義変更と捉えられ、建設業許可もそのまま引き継げると考えられがちです。しかし、個人事業主と法人は、法律上は異なる事業者として扱われます。このため、個人名義の許可番号を、新たに設立した法人がそのまま使用できるわけではありません。
法人名義で軽微な工事の基準を超える建設工事(原則として請負代金500万円以上、建築一式工事の場合は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上)を契約する予定がある場合、許可の移行方法を誤ると、無許可営業、名義貸し、虚偽申請などの問題につながる可能性があります。
私どもでは、このようなご相談をいただいた際、すぐに法人の許可申請書作成に取りかかることはせず、個人から法人へ、いつ、何を、どのように移す予定なのかを時系列で丁寧に整理することから始めます。本記事では、建設業許可の法人成りにおける重要な判断ポイントを、大阪府の申請実務を主軸に解説いたします。
目次
個人事業主として長年建設業を営んでこられた方が、事業承継や規模拡大を視野に入れ法人化を検討するケースは少なくありません。例えば、個人名義で数年間建設業許可を保有し、専門工事を営んできた事業主様が、将来的な事業承継のため株式会社を設立し、役員構成を見直すといった状況です。この際、法人設立後すぐに法人名義での軽微な工事の基準を超える工事契約を予定しているものの、法人が建設業許可をまだ取得していない、あるいは個人の許可をそのまま使用できると誤解しているといった状況が見受けられます。
また、法人設立前から実質的な経営を担っていた方が、引き続き法人の経営の中心となり、新しく代表取締役に就任した方が建設業の経営経験や現場実務経験が十分ではない場合もあります。このような状況で、元請会社へ「今後は法人名義で取引する」と伝え、すでに法人名義の注文書案が作成されているといったケースもございます。この段階で、「個人の許可番号を法人名義の注文書に記載すれば契約できる」と考えてしまったり、「法人設立前から本人が法人の常勤役員だったことにして、個人事業時代の実績を法人の実績として記載できないか」といった疑問をお持ちになったりすることは、珍しいことではありません。
この問題の根本は、単に法人の登記が完了しているか否かではありません。建設業許可の取り扱いにおいて、個人事業から法人への事業移行が、現時点でどの段階まで進んでいるかを正確に把握することが重要です。
建設業法における事業承継制度(建設業法 第17条の2)を利用する場合、原則として事業譲渡の効力が発生する前に、管轄行政庁の認可を受ける必要があります。そのため、法人設立日のみで判断するのではなく、以下の事実関係を詳細に確認することが求められます。
既に事業全体を法人へ移してしまっている場合、事後認可として扱えるか慎重な確認が必要です。一方、法人を設立しただけで、事業譲渡そのものはまだ実行していないのであれば、事業承継認可を検討できる可能性があります。
よくある誤解として、個人から法人への事業移行を、単なる商号変更や代表者変更と同義と捉える点があります。しかし、個人事業主の氏名を法人の商号に変更するだけで許可を移転できる変更届出は、建設業許可制度上は存在しません。
事業承継認可の要件を満たさない場合や利用しない場合は、個人事業の建設業許可を廃止し、法人で新たに建設業許可を取得する手続きを検討するのが一般的な流れです。
もう一つの失敗例は、個人の許可番号を、新設した法人の書類に記載してしまうことです。個人の許可は、あくまでその個人事業主に対して与えられたものです。法人が個人の許可番号を、あたかも自社の許可番号であるかのように表示することは、適切な行為ではありません。これは、無許可営業や名義貸しとみなされる可能性があり、重大な法令違反につながるリスクがあります。
軽微な工事の基準を超える工事(請負代金500万円以上、建築一式工事の場合は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上)を法人名義で契約する予定がある場合、法人自身が当該業種の建設業許可を有している必要があります。
私どもでは、まず現状を正確に把握するため、主に三つの時系列を作成し、事業の全体像を整理いたします。これにより、個別の状況に応じた最適な手続きを判断するための基礎を築きます。
法人設立日、代表取締役やその他の役員の就任日、法人口座の開設日などを確認します。これらの情報は、法人の法的実体としての成立時期や、経営体制の構築状況を把握するために不可欠です。
個人事業から法人への事業譲渡契約を締結した日、従業員の法人への転籍日、車両や工具、材料在庫などの資産移転日、個人事業の廃止予定日、法人での営業開始日などを整理します。これにより、事業がいつ、どのように個人から法人へ実質的に移行したか、または移行する予定かを明確にします。
法人名義で予定されている工事の見積日、注文書発行予定日、契約予定日、着工予定日、完成予定日などを確認します。特に軽微な工事の基準を超える工事については、契約主体となる法人に建設業許可があるかどうかが極めて重要となるため、これらの情報は慎重に確認いたします。
その上で、建設業法に基づく事業承継認可が利用できる状態にあるのか、あるいは法人で建設業許可を新規に取得する必要があるのかを総合的に判断します。重要なのは、法人名義で工事契約をしたいという希望から逆算するのではなく、現在の事実関係と法令に基づいて、適切な手続きを検討することです。
法人成りにおける建設業許可の相談では、初回面談時に少なくとも次の事項を確認し、現状の正確な把握に努めます。
建設業許可の申請では、提出書類に記載された日付や内容が、実際の事業活動と整合していることが重要です。例えば、法人設立以前から特定の人物が法人の常勤役員等であったとするような事実は、原則として認められません。虚偽の事実に基づいて申請を行うことは、建設業法 第50条に規定される罰則の対象となる可能性があり、許可の取り消しや数年間の申請不可といった重大なリスクを伴います。
また、個人事業時代に施工した工事実績を、新設法人が施工した実績として申請書に記載することも適切ではありません。これらの行為は、実態と異なる情報を提出することになり、許可審査において問題視されます。
ただし、個人事業主としての経営経験や工事経験は、法人の許可要件である「経営業務の管理責任者等(建設業法 第七条 第一号に規定する適切な経営業務を遂行するに足りる能力を有していること)」や「専任技術者(建設業法 第七条 第二号に規定する専任の技術者を有していること)」の確認において、活用できる可能性は十分にあります。しかし、これは「個人の実績を法人の実績に書き換える」という意味とは異なります。
誰が、どの立場で、いつ、どの工事を行ったのかを、契約書、注文書、請求書、確定申告書、入金記録などの客観的な資料に基づいて証明することが求められます。大阪府での申請実務においても、これらの資料は厳格に確認されます。
また、個人事業主を法人で常勤役員等として扱う場合、個人事業を継続したまま、個人と法人の双方に常勤していると説明することには慎重な検討が必要です。実際の勤務実態、事業の移行日、個人事業の廃止時期などについて、一貫性のある説明が求められます。二重常勤とみなされる場合、許可要件を満たさないと判断される可能性がございます。
法人成りにおいては、建設業許可申請の手続きだけでなく、多岐にわたる関連業務を横断的に整理する必要があります。例えば、従業員の雇用主を法人へ変更する場合は、雇用契約の再締結、給与計算、そして社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険、労災保険)の加入手続きなど、社会保険労務士としての知見が求められる領域の整理が不可欠です。
車両、工具、材料在庫といった資産を法人へ移転する際には、個人から法人への資産譲渡として適切に処理する必要があります。また、個人事業の売上と法人の売上をどの時点で切り替えるのかについても、税務上の観点から整理が必要です。
登記、税務、社会保険に関する手続きは、建設業許可申請とは異なる法令や判断基準に基づいて行われます。私どもでは、許可申請に必要な事実と資料を整理した上で、それぞれの領域を混同しないよう、適切な進行表を作成し、スムーズな移行をサポートいたします。
建設業法に基づく事業承継認可を利用できる場合であっても、法人側が建設業許可の要件を満たしている必要があります。主な要件は以下の通りです。
個人の建設業許可は、法人を設立しただけでは、自動的に法人へ移転するものではありません。法人成りをご検討の際は、まず個人と法人を法律上の別の事業者として明確に区別して整理することが重要です。
その上で、個人事業から法人への事業譲渡がまだ実行前なのか、既に実行済みなのかを確認し、建設業法に基づく事業承継認可の利用可否、または法人の新規許可取得のどちらが適切な手続きであるかを判断する必要があります。
例えば、軽微な工事の基準を超える工事を法人名義で契約しようとしている場合、個人の許可番号を記載して先に契約することは、無許可営業のリスクを伴うため避けるべきです。
私どもでは、法人名義での契約を一旦保留し、個人と法人の契約、資産、従業員、営業所、売上の移行時期を詳細に時系列で整理することをお勧めしています。そして、経営業務の管理体制、専任技術者、財産的基礎などの許可要件を慎重に確認し、管轄行政庁へ事業承継認可の利用可否について事前に相談することが、円滑な事業移行への第一歩となります。
急いで法人名義へ変更することだけが目的ではありません。建設業許可、工事契約、施工、請求、入金、そして雇用の名義と実態を法令に則って一致させることが、法人成りで最初に行うべき、そして最も重要な整理であると私どもは考えます。
A1: いいえ、すぐに法人の名前で工事を請け負うことは原則としてできません。個人事業主と法人は法律上、別個の事業者として扱われます。したがって、法人が建設工事を請け負うには、法人自身が新たに建設業許可を取得するか、建設業法に基づく事業承継の認可を受ける必要があります。特に、請負金額が軽微な工事の基準(原則500万円以上、建築一式工事の場合は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上)を超える場合、法人の許可が必須となります。
A2: 事業承継認可は、個人の許可を法人に「そのまま」引き継ぐ手続きではなく、事業主体が変わる際に許可の継続を認める制度です。認可を受けるには、法人側も建設業許可の各種要件(経営業務の管理体制、専任技術者、財産的基礎など)を満たしている必要があります。また、事業譲渡の効力が発生する前に認可を受けることが原則とされており、事前の準備と行政庁への相談が不可欠です。
A3: 個人の実績をそのまま法人の実績として記載することはできませんが、個人事業主としての経営経験や技術経験は、法人の経営業務の管理体制や専任技術者の要件において活用できる可能性があります。具体的には、個人事業時代の確定申告書、工事請負契約書、注文書、請求書、入金記録、健康保険証、雇用保険の加入記録など、客観的な資料に基づいて、誰が、いつ、どのような立場で、どの工事に携わったかを証明することが求められます。
A4: はい、建設業許可の法人成りにおいては、社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険、労災保険)に関する手続きも非常に重要です。個人事業から法人に雇用主が変更される場合、従業員の雇用契約の再締結や、法人としての社会保険・労働保険の新規適用手続きが必要となります。これらの手続きは建設業許可の要件にも深く関わるため、行政書士だけでなく、社会保険労務士としての専門知識を持つ当事務所までご相談いただくことをお勧めします。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の申請については管轄行政庁または専門家にご確認ください。建設業許可・経営事項審査・労務手続きについてご不明な点がございましたら、当事務所『リーガルシンク社労士・行政書士事務所』までご連絡ください。初回のご相談は無料で対応させて頂きます。
といったお悩みのある方は、
まずは一度ご相談ください。